GE 帝国盛衰史 ―― 「最強企業」 だった組織はどこで間違えたのか
原著 : Lights Out : Pride, Delusion, and the Fall of General Electric
著 : Thomas Gryta、Ted Mann
訳 : 御立英史
発行年 : 2022 年
キーワード : GE (ゼネラル・エレクトリック社)
1 章 「きみは知っていたのか?」
2017 年時点での次期 CEO ジョン・フラナリー
「見せかけの功績を追うな」 (No more success theater)
GE の重要な事業である GE パワーの利益はほとんど帳簿上のものだった
2 章 ザ・ミートボール
労働組合との対峙 : ブルワリズム
3 章 ニュートロン・ジャック
同世代で最も偉大な経営者と言われていた GE の CEO、ジャック・ウェルチ
無駄なコスト削減のために官僚主義の排除を行う
不要な階層を削除
産業系事業では 5 カ年計画は不可欠だと考えるものが多かった → ウェルチは無意味 (ブルシット) と切り捨て
「成長の遅い経済で速く成長する」
コングロマリット・ディスカウント
ウェルチが行った経営改革
マネジメント教育とマネジメント効率の向上
金融への取り組み
ウェルチの成功には社員の痛みが伴った
解雇など → ニュートロン・ジャック
ランク・アンド・ヤンク
1980 年代以降、GE の負の側面が出てきた
債権スキャンダル、環境汚染問題 (PCB)
ウェルチの最後の 1 年には、株価が 3 割も下落
後継の CEO 選び
4 章 ビッグ・ジェフ
ジェフ・イメルト
冷蔵庫のコンプレッサにロータリー式を採用して故障が続発
イメルトが解決
ウェルチの数字へのこだわりが企業文化を誤らせた
5 章 後継者選び
ウェルチの後継者選びが最終段階に入った頃、イメルトは GE メディカル・システムズ (現 GE ヘルスケア) の CEO に
そのころは 1990 年代で、イメルトはインターネットの可能性にも注目
ウェルチは、新興のドットコム企業が GE と肩を並べるようになるとは考えなかった
とはいえ無視もせず、世界の関心事と自社のつながりをアピールするようにネット戦略を持つように
1999 年には、ウェルチの後継者候補 3 人が明らかに
GE パワーのボブ・ナルデリ
GE アビエーションのジム・マックナーニ
ジェフ・イメルト
2000 年の感謝祭の週末に、イメルトを選ぶ決定
ウェルチが自らの手でハネウェル買収を行おうとしたため、イメルトは正式就任まで 10 ヶ月待たされた
6 章 同時多発テロ
2001 年 9 月 11 日、『ジャック・ウェルチ わが経営』 の発売に向けて、ウェルチはテレビ出演予定だった
イメルトにとっては、就任早々の試練
ウェルチの離婚騒動が起こり、その流れで GE の成長が会計操作によるものではないかという疑惑 → その払拭はイメルトの仕事
テロによる影響を巨額の損失計上で対応する手もあったが、使わなかった (そうするとこれまでの会計トリックもバレるのでは?)
7 章 会計トリック
2001 年初頭、GE キャピタルがあちこちで不動産を買い集め始める
GE には、ディールを利用して利益目標を達成する仕組みがあった
GE の PER は高かったため、PER の低い企業を買収するだけで自動的に利益を上げられた
しかし、高い株価を維持するためには、もっと多くの買収をするか、別の方法で利益をふくらませる必要
そのひとつが、会計規則を捻じ曲げて買収の利益を膨らませること
例えば、買収した企業の保有不動産を低く評価すれば、減価償却で利益を減らすことができ、将来高く売れれば大きな利益
nobuoka.icon いまいちよくわからん
高く買ってくれる相手が必要 → エジソン・コンデュイットという解決策
そのころ、粉飾会計でエンロンが崩壊
GE も透明性にかけるトリックを利用
エジソン・コンデュイットは、実質的には GE が支配していた会社だが、投資家はその存在を知らなかった
コンデュイットは、コマーシャルペーパーと呼ばれる債券を販売するために広く使われている仕組み
GE キャピタルから、資産を簿価より高く買うという役割も
企業にとって利益の急増は歓迎すべきだが、上場企業は常に前年と比較されるので着実な増加にしたい
ハニーポットを使った不正な会計処理は否定されたが、やっていることの目的は同じ
2002 年に米国企業改革法 (サーベンス・オクスリー・アクト) が成立
8 章 GE を見る目の変化
2 つの課題
景気後退と世界同時多発テロにより、GE の基盤である世界経済の成長が鈍化 → 経済成長の芽を見つける必要
簡単で確実な帳簿上の収益プールがなくなった
GE ではキャッシュについて考える必要がなかった
PIMCO から、透明性について非難
会社やイメルトは疑念を払拭するべく動いた
9 章 封じられた最後の手段
イメルトへの移行期、リスク軽視の風潮に (売上でカバーできるなら多少のリスクには目をつぶる)
透明性を確保しようとすると赤字になる → 事業売却で利益確保
その際、買い手から債券を購入して資金提供
10 章 買収と売却
多くの買収
フランスのメディア・通信企業ヴィヴェンディの映画・テレビ資産の買収 → NBC ユニバーサル設立
インストルメンタリウム買収 → GE ヘルスケアの事業をテクノロジーと患者モニタリングに広げる布石
など
売却も行う
保健事業など
11 章 ブランド再構築
オーガニックな成長を追求
マーケティングのためにベス・コムストックを抜擢
GE の CMO に
タグラインやロゴも変更
創造するイマジネーション
会社独自の書体も開発
インスピラ (Inspira)
マーケティング重視の方針
マーケティングを、作ったものをどう売るか、だけでなく、そもそも何を作るかを決定する機能として重視
マーケティング・カウンシルという社内委員会を設立
最も優秀な営業・マーケティング担当者で構成
ベストプラクティスを共有し、成長計画を立案
深い意識レベルで、成長は計画可能であるという考えを定着
nobuoka.icon こういうの、SECI っぽい
コングロマリットの真のメリットは、ここの事業を強力な組織のもとに結集させること
そのような組織を Borg と呼んだ
社員に求められた境界のない営業活動を支える
自分の部門の製品だけでなく、会社の全製品を売る (さらに言うと、ポートフォリオを売る)
コングロマリット経営は、コングロマリット・ディスカウントだけでなく、管理コストを増大させる点でも人気がない
イメルトは、人気のなくなったコングロマリット構造を正当化するビジョンを確立しつつあると考えたが、実態は、ウェルチが忌み嫌った階層型マネジメントの復活
イメルトのもうひとつのビジョンは海外進出
12 章 買収による拡大
イメルトは GE の成長可能性を投資家にアピールしたが、株価は振るわなかった
GE キャピタルでは、ただお金を稼ぐことが考えられていた
事業規模が大きくなるほど、買収による利益の変化が小さくなっていった
リスクの高い案件にも手を出さざるを得なくなった
2006 年、サブプライム住宅ローンはうってつけの市場
GE キャピタルには、幹部社員を生み出す仕組みもあった
企業監査スタッフ (CAS) という 2 年間の財務管理プログラム
外部監査を行っている KPMG とも密接に連携
監査という名目だが、実際には利益機会を掘り起こす
アップ・オア・アウトのプログラム
13 章 歴史的事業からの撤退
イメルトは、事業の総点検を行い、ものによっては売却
特殊素材部門、シリコーン部門、先端素材部門を売却
GE プラスチックスの売却
17 章 質の低い利益
実効税率が低いことは利益の質が低いことを意味する
21 章 メディア事業からの撤退
2009 年 (2010 年かも?)、NBC ユニバーサルの売却
25 章 買収ターゲットを探せ55
マルチプル
候補としてアルストム
26 章 「簡素化」 の追求
CFO のキース・シェリンが GE キャピタル CEO に
新たな CFO はジェフ・ボーンスタイン
2013 年に簡素化と銘打った改革プログラム
GE と環境
GE における金融事業の危機
金融危機 (?) 後の GE の変革
再度のピボットを狙った
まず、大型買収で機械やサービスからの利益を増やし、GE キャピタルの縮小
GE キャピタルの切り離し
GE によるアルストム買収
GE がテック企業を目指した話
石油事業の失敗
デジタル化の推進をしつつ、重厚長大部門の刷新
石油ビジネスの支配を目論む
GE オイル&ガスの設立
ラフキン・インダストリーズ買収
原油価格の下落
ベーカー・ヒューズと統合してベーカー・ヒューズ・GE カンパニーに
トライアン・ファンド・マネジメントからの投資
アクティビストにとって、コングロマリットは理想的なターゲット
企業を解体することで各部の価値を高めて、全体としての価値を高める手法
トライアンは、企業再建の支援
GE パワーが成長を求められ、サービス契約をいじって利益を作ることが横行
新 CEO にジョン・フラナリーが就任
2 年弱で解任
後任にカルプ
2018 年、GE がダウ・ジョーンズ工業株平均から外されるというニュース
取締役会長と CEO
ジャック・ウェルチは 2020 年逝去
COVID-19
旅行が停止し、航空も減り、ジェットエンジン事業に影響
一方、計画していたリストラを円滑に進められたという良い面も
ウェルズ通知
介護保険の負債、保険債務の評価
証券取引委員会 (SEC) との和解、改善命令
GE パワーの実体のない利益計上
繰延収益化
隠していたことを問題視
保険事業の不適切なマネジメント
カルプは企業監査スタッフ (CAS) を解体
TBD
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